太田惠資インタビュー2002 part5

「影響を受けたアーティスト」


アーティストの活動を追って音楽性を探っていくと、どうしても気になってくるのがそのアーティストのルーツではなかろうかそうした気持ちで訊いた内容が、ここまで広範なことになろうとは・・・。太田ファンの皆さん、私たちの前には 広大な沃野が広がってますよ。


ーー影響を受けたアーティストとか、こういう人とやってみたい、というのは?

難しいねー。うーん・・・僕は特に、気が多いから、ホントに一言では言えないなあ・・・。
どういえば良いんだろうなあ?

自分の小遣いで初めて買ったアルバムというと、セルジオ・メンデスとブラジル'66っていう、ジャズとボサノバが融合したような、フュージョンやクロスオーバーっていう名前もなかった頃の、ジャズっぽくてブラジルの民族音楽っぽいのが凄く好きで。でもその前に兄貴だかが聴いていたベンチャーズ、ビートルズとか、あと何だろう、当時流行ったポップスで・・・サン・レモ音楽祭だからシルヴィ・バルタンか、あとカンツォーネのジリオラ・チンクエッティとか、当時流行ったプレスリーもそうなんだけど、そういうヒットソング。あと絶対、ものすごく影響受けているのはやっぱりビートルズだし・・・その後ビートルズが解散したんで、というので何かを求めていてハードロック、ツェッペリンとかディープ・パープルとか・・・でヴァイオリンで何かロックっぽいことできないかって探した結果やっぱりイタリアのPFM、フランスのマグマ、U.K.、キング・クリムゾン、あともっと言えばダリル・ウェイズ・ウルフとか、いっぱいあるよね、CANもそうだし、ヘンリー・カウ、エッグ、イースト・オブ・エデン・・・(笑)。

ーーいいっすねー(笑)。


ソフト・マシーン、ゴング、もうそのへんは全部。でそうこうしてたらジョン・マクラフリンが、マハヴィシュヌ・オーケストラでジェリー・グッドマンとやり出して。そうすっと、「あーロックよりジャズの方がすげえなー」って思ってたらマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンは絶対入るしね。でヴァイオリンでビ・バップやってる人いない?ってんでチャーリー・パーカーとかそういうのに影響されて、で当然ジャズヴァイオリンの父と言われるステファン・グラッペリ、ジョー・ヴェヌーティそれからスタッフ・スミス、エリントンの楽団でヴァイオリンとトランペットやってたレイ・ナンス。もっと他にないかと思ってたらR&Bでパパ・ジョン・クリーチとか・・それはロックの方でジェファーソン・エアプレインのゲストで入っているじいさんだったりもするし。もう全部つながるなあ・・・。マハヴィシュヌでやってたジェリー・グッドマンがフロックっていうロックバンドやってたり、アメリカの方にもカンサス、ドレッグスとかヴァイオリンの入ったヤツあるしね。そうやっていくとアメリカの方ではカントリーやブルーグラスが入ってきて、リチャード・グリーン、マーク・オコナー・・・(笑)。僕はもうヴァイオリン・オタクなんでいっぱいいるね。ははは(笑)。アイリッシュ系でもいっぱいいるよね。他にもフェアポート・コンヴェンション、とかそのへんのフィドル系はもう、全部だよ。

それと同時にパフォーマンスやってたんで、ダンサーと現代音楽の人が結びついて、ジョン・ケージと一緒にずっとやってたダンサーのマース・カニングハム、そうなるとオノ・ヨーコとかも出てくる。そうすっとそれに凄い近いところでジョン・ゾーン、ヴァイオリンでツンツン頭のローリー・アンダーソンとか、全部入ってくる。フリージャズの方ではビリー・バングっていうすごいフリージャズの人とか。その前にリロイ・ジェンキンスとか、まあいろいろいるんだけどね。いわゆる技巧派・正統派じゃないんだけどすごくいいんだよね。そうなるとオーネット・コールマンが持ち替えでヴァイオリンやってて。

でパフォーマンスだとフランスでジャン・コクトーとエリック・サティ、もっと言うとストラヴィンスキーとか・・・パリのオペラ座でものすごい面白いことやってたっていう、そういうのもすごい繋がってくるし。ステファン・グラッペリとジャンゴ・ラインハルトなんかポピュラーミュージックやりつつも、時代のせいもあるけどドビュッシーやラヴェルの影響をすごく受けていて。

僕はクラシックもすごい好きで、バッハも好きだけど、やっぱりフランス印象派・・・フォーレ、ラヴェル、ドビュッシーもものすごく好きだし、ちょっと民族っぽいので言うとロシア五人組って言われている、リムスキー・コルサコフとかムソルグスキー、勿論チャイコフスキー、プロコフィエフも好きだし、もうちょっと後になるとショスタコヴィッチなんかもすごい好きだし。もう全部だね。

そうなると、ヌーヴェルバーグで映画を創っていたものや新しい感覚で作っていたものもすごく好きだしね。まあご多分に漏れず言えば、やっぱりタルコフスキー、ブニュエルとかものすごい好き。そうかと思うと映画音楽でフランシス・レイ、ミッシェル・ルグランとかもすごい好きで。フランスっぽいものって好きかなあ。ちょっとお洒落っていうのとアンニュイな感じが。

で、一緒にやってみたい人っていうとねえ・・・。ちょっと前に名前の出た、ブルーグラスのマーク・オコナーって人が自分のアルバムでやっちゃったんだけど、いろんなヴァイオリン・ヒーロー、自分が影響を受けたヴァイオリンの人とやってみたいね。まあステファン・グラッペリは亡くなっちゃったんで、マグマとかやってたディディエ・ロックウッドとかね、エディ・ジョブソン、ジャン・リュック・ポンティ、マーク・オコナーとか・・・まあいろんなやってみたいことある中で、自分のヒーローと・・・亡くなった人はちょっと無理だけど、その人その人のジャンルで、僕は全部やってやりたいな、と思う。それがまあ、いつになるかわかんないですけど。

マウロ・パガーニとかどうしてるのかね、PFMのね。ダリル・ウェイもいるはずだし、キング・クリムゾンのデヴィッド・クロスもいるはずだし・・・やってみたいね。

それから・・・すっごく映像的なことをやってみたいですね。映画作れるかはわかんないけど、自分が映画監督出来ないとすれば、かなりわがままの言える範囲で映画みたいなことをやりたいと思う。エンターテインメントなのか音楽なのか映像なのかわかんないけど、昔のチャーリー・チャップリンとか・・・まあチャップリンはお涙頂戴もあるので通の人にはどうかと思うけど、ロイドとか、あの絶対笑わないバスター・キートン、そういうのにもすごい影響を受けてる。だから映画音楽・・・サントラをやるというよりも映画製作をしたいね。

エスニックの巨匠の人たちともやりたいしね。吉見さんの兄弟子のザキール・フセインとかもやりたいし、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの人ともやりたいし・・・いろいろいるね、そういう身分の人になりたいね(笑)。やりたいっていうよりも、やってもおかしくない人になりたい。やれるかどうかは別としてね。

あとは、若い人たちとやりたいね。誰っていうことでなくて、日本人でも。多分ぼくらにとって一番の恐怖っていうのは世代交代をしてしまうことで、やっぱり人生始終現役でいたいっていう恐怖がある、いやそれは僕だけかもしんないけど、そういうことを含めて若い人たちの感性・・・常にみずみずしいところでいたいっていうかね。それを言うのにはまだちょっと早すぎるのかもしれないけど、10代・20代のミュージシャンとどんどんやりたいね。だから自分のバンド作るとしたら、いまやっている人たちではなくて、自分で足を運んでライブ見に行って、選んで見つけようかな。それで太田バンド作りたいかな。

よく思うのは、みんなが好きなミュージシャンって限られてくるから、例えばTOYやってても梅津さんやってても、ArabindiaとかMASARAも、芳垣バンドやってても、また同じ人が出てくるじゃないですか(笑)。ちょっとそうじゃないところでやりたいね。手応えあるしね。若い人たち、みんなすごい上手い、すっごい上手い!から。勉強してるし、やっぱり好きな物が新しいしね。すごく手応えがあるので、そういう人たちを見つけて、噂でなくて自分で足を運びたいね、僕がいつもファンの人に怒っているように。

ーーなんでこういうことを訊いたかというと、僕自身が訊きたいっていうのがあったのと、僕自身も含めてこの文章を見てくれるファンの人たちがもう一歩外に出る、いろんなものを見に行って、聴きに行って、そこから発生したものを好きになる助けになれば、と思ったんですよ。前のインタビューでいうと、「いろんなことをやっていれば総合して聴いてくれるかと思ったけどそうでもない」と。そういう人には、やっぱり、もうワンステップ行って欲しいなって。

そうなんだよ。まあArabindiaとMASARAが好きな人がものすごく多くて、それはそれでその人の自由なんで俺が言うことではないんだけど、やっぱりArabindia好きな人にもElectric Nomad好きになってほしい、と思うしね。そういう意味では自分としては、拡がって欲しいね。もっとすごくアンダーグラウンドなこととかアヴァンギャルドなことをやってたわけだから。「今日は優しい音を聞いて安心しました」とか、そういうのばっかりじゃなくて、いわゆる肌に合わないようなことを、「なぜこの人はこんなことやってんだろうか?」っていう風に興味を持って欲しいね。

(続く)

2002.1. 都内某所にて
Interviewed by S.Hayashi

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