ーー演奏については、変わったというのは?
演奏はねえ、自分でいうのは変なのかもしれないけど、多分どんどん上手くなっていると思うんです。前もインタビューで言ったかもしれないけど、クラシックの音大とか行かなかったんで、自分みたいな人間は、この年でさえも、ちょっと練習すると昨日までできなかったことができるようになる。いわゆるヴァイオリンのテクニックという意味ではまだいくらでもできることがあるし、どんどん上手になっているような気がしてるんだけどね。それは他人が見たらどうかわからないけど(笑)。
ただそれがいいかどうかはちょっとわからないんですよ。クラシックの音色ではないところでやりたいんだけど、クラシックの音色も出したいなんて欲もでてきたり・・・。それと、知らんうちに、上手になって失っているものもあるからね。
ーー「ファーストアルバムが好きだった」みたいな。
ははははは。あるよね。
ーー個人的に興味があるのは、アーティストでずっと長くやっている人で、それでもなお上手くなるとか新しいことを憶えるとか、そういうエネルギーがあるのがすごいなっていうことなんです。多分、中には、40とか過ぎると、そういうのがなくなる人もいっぱいいるんじゃないかな、って思うんですよ。
うん、多いかもね。
想像ですけど、最初から上手い人は、人によってはある時点で終わるかもしれない。例えばオーケストラに入っちゃったり、スタジオで仕事があると、それがお仕事になっちゃって・・・多分、そういう人は、弾けるんだ、普通に。で、弾けて終わりなんじゃないかね。むしろ最初から行き着いてしまった人は、上達する喜びも得難いというか、早く壁にぶつかるというか。
だから、hayashiさんの言われることの理由の一つには、(自分は)下手だったからっていう(笑)。下手で良かったという話と、あとは・・・そうだね、クサイ言い方だけど、人生にいろいろ苦しいこととかキツイこととかどんどんあるじゃない、身内が亡くなったとか親しい人が亡くなったとかそういうことも含めて・・・あるいは自分の限界に気付いて、とか。そういういろんなことも含めて、音楽って、努力すれば報われるから。
音楽は嘘つかない、音楽だけは裏切らない。頑張った分だけの見返りをちゃんとくれるみたいなところが、実感としてあるから、それで頑張っているんだと思う。人生の哀しさとか苦しさから、すがるように(笑)。自分が頑張ったこととか努力したことが、ちゃんと結果として出るっていうことって少ないと思うんだよね。会社とかに勤めていると、直接個人の評価につながることって少ないでしょ。
ここに来て、音楽を選んで大変だなって思うようにもなったね(笑)。年取ったせいだと思うけど、自分の腕一本で行くしかないってところをだんだん自覚するようになった・・・弾けなくなったら終わりだもんね。でも、だからおもしろいんだ。努力することがすごく楽しいっていう。
(続く)