太田惠資インタビュー2006 part5

深刻にならずに飄々と、えげつないことを渋くやっていきたいね


ーー他のインプロヴァイザーとやるときに、人によって「自分と同じ感覚だな」という人と、「この人はわからん」という人と、あるんですかね?

ははははは(笑)。(ひとしきり笑ったあと)・・・ありますね!。
それも結構、インプロの達人と言われている人でも、ある。・・・きっとそれはそれなりに、その人が培ってきたものだから否定するものではないんだけど、「方法論が違うな」ってことはあるね。いやもう、こういう話になると、一人一人顔が浮かぶんだけど(笑)。

でもそれは向こうも思ってるかもしれない。お互い様だからね。こちらは方法論でやってないから、否定はしてないんだけど、向こうは否定してるかもね(笑)。あとね、結構厄介なのは、その達人は、自分はすごいと思っていて他人を信用していない場合がある。他人を信用していない感じの人とインプロをやるのは、僕はあんまり好きじゃないかな。(そういう場合その人は)自分で全部仕切ろうとする・・それはそれで成り立つじゃない、その人にまかせておけば。それなりに良い物になるけど・・・あんまりやった意味はないよね。

スピードが勝負の人もいるんですよ。でも初めてやる人だったら、その人がどういう人なのかを(知るのに)、ある程度最初は時間かかってもしょうがない、って思うけどね俺は。スピードが勝負の人はどんどん展開していくから・・・で、(相手がついてこないと)「ダメじゃん、スピード感ないよ」みたいな。でもそうじゃないのも即興の中にはいっぱいあるからね。

ーーそういうのは日本と海外の人で違ったりするんですか? というのは、昔読んだ雑誌の記事で言っていたのが、「日本人のインプロヴァイザーには暗黙の了解で“仕掛けられたら必ず切り返すというのがある」と。ところがある海外のインプロヴァイザーが日本でやったときに、日本人のアーティストが仕掛けても全然合わせてこない。そのまま終わろうとするところで、日本人のアーティストが終わらせずに執拗に仕掛けて、そして最後にその海外のアーティストがキレて、メチャメチャやって終わったって記事があったんですよ。

誰なのかなって想像がつくような気がするけど(笑)。
そういう傾向はあるかもね。外国のインプロヴァイザーは、インプロヴィゼーションに慣れてるから、スピードも早いんですけど、別に相手のやっていることにちゃらちゃらと乗っていかないよね。日本はいろいろですね。そういう記事も日本ですごく出回ってるから、「俺はちゃらちゃら乗らないんだ」っていうのをわざとしてる人もいる(笑)。「決めてかかってたらインプロかな?」って思うんだけどねー。

でも寄り添わないのにもやっぱりセンスが必要だからさ、「お前がリズム出したからって俺は乗ってこないぞ」ぐらいの判断だったらねえ・・・全体として一つの絵にならないと意味ないからね。
だから僕なんか好きなのは、仕掛けてるんだったら乗ったフリをしてどっかで裏切るとかね(笑)。でもその、執拗に仕掛けられて、最後にスゴいことやったっていうのはやっぱりすごいよね。最後の一幕ってきっと凄い(笑)。

灰野さんなんかいいバランスだね。インプロが好きな人だったら、太田・灰野デュオは面白いと思うよ。もう悪魔の儀式になって、「ゴーッ」てしてるけど(笑)。
ただ灰野さんはバトルバトルでパフォーマンスになってるのをやりたいのではないと思う。やっぱりきちんとしたインプロをやりたいんだと思うね。

そうだね、インプロはもっとポップになるといいね。インプロってお客さんがあまり入らないんだけど、でもインプロを面白くなくしたのもインプロヴァイザーのせいだからね。ホントは面白いし、面白くできると思うよ。うん。

そのへんで最初の話に戻ると、「自分も発信したいな」と。わかりやすいセッションとかアルバムもいいんだけど、俺がずっとやってきたことの中の、真の中身は、インプロヴィゼーション、パフォーマンスがあるからね。そこらへんで何か発信できれば。

その中で渋くなっていければ・・・あの、ジャッキー・チェンのカンフー映画に出てくる、お師匠さんみたいになりたいよね(※「酔拳」「蛇拳」などでユアン・シャオティエンが演じた、カンフーの達人)。ホントはすっげー強いんだけど、酔っぱらってヘロヘロしてる、みたいな(笑)。そういうキャラクターになりたいね。愚痴こぼしてるうちはさ、深刻じゃん。あんまり深刻にならずに飄々と、反省もしながら(笑)、えげつないことを、渋くやっていきたいね。だんだんそういう年になってきたからね。


2006.1. 都内某所にて
Interviewed by S.Hayashi

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