太田惠資インタビュー2007 ややっの夜スペシャル part1


西荻窪の駅近く、地下にあるライブハウス「音や金時」で、ほぼ毎月一回のペースで行われている企画がある。「ビオロンの太田惠資 ややっの夜(や)」。太田が司会/進行を務める架空のテレビ・ショウという想定で、毎回ゲストを迎えて即興で演奏を行うというこのシリーズ、いまの太田惠資を語る上では欠かせないものとなっている。その「ややっの夜」がこの8月に50回目を迎えるという。そこで、この企画について、スペシャル・インタビューを敢行した!

ややっの夜の成り立ち

もともと成り立ちは、音金(=音や金時)さんが、「他でやってないことで、太田らしいことをやってみないか」と言ってくれたんですよ。「じゃ、まあやってみましょうか」ということで試行錯誤しているうち、テレビの「徹子の部屋」のライブバージョンみたいなのがいいんじゃないかと・・・昔からねえ、エド・サリヴァン・ショウとか、アンディ・ウィリアムス・ショウとか、そういう外国にいっぱいあったエンターテインメント・ショウというものが好きだったんですよ。そういうのがやりたくて、だから本当は司会だけでもよかったんだけど、それだけではお客さんが来てくださらないから(笑)、まあ演奏もしよう、と。音楽も会話ですから、別にトークショウでなくても、そのゲストを迎えて一緒に演って、そのゲストの方の人となりがわかればいいかな、と。

ところが最初の頃は、人に声をかけるのがすごく苦手なんですよ。自分が電話が苦手というのもあるし、自分の性格的にも「みんな忙しいのに、そういう人たちをお呼びしていいのかな」なんて気弱だったんで、最初の頃はけっこう、ソロが多かったんです(笑)。「(ゲストを)見つけられませんでした」って。で、二年か三年くらい経ったときに、音金さんから   あそこの店はすごく面白くて、ポリシーを持ってやってるんですけど   「やっぱりややはソロとは違う形にしてほしい」という風に言われたんですよね。「ソロは別の日で取ります」と。「それはそうだな」と思って。それでもまあ今でも、前の日に電話をかけてゲストを見つけたりして、それで(ホームページ管理人の)hayashiさんに(直前情報を載せるよう)活躍してもらってるんですけどね(笑)。

昔はね、若い方とか知らない方とか、例えば音楽以外のジャンルの職人さんとかを呼ぶのがいいかなと思って   まあそれは「やりようによっては」というので今もちょっと残ってるんですが   それが今はね、変な言い方ですけど、自分の世界を持っている方・一流の方を呼びたいな、という風に、少し変わってきましたね。

そこで何をやってるかというと、自分の即興の技磨きでもあるんですよ。どんな方が来ても、形にするぞ、という。つまり自分としては、武者修行の意味もあるんです。そういう意味で、自分の世界をもっている方で・・・例えば歌(歌手)の方、「即興は出来ないけど」という方でもおもしろいんですよね。少ないですけど歌の方も何回か出てらっしゃいますよね。

おもしろいのは、ハコ、パッケージ・・・つまり口上があって、エンディングタイトルがある、それと(ステージの)後ろの、ママ金さん(※音や金時のママ、俳句による即興パフォーマーでもある)が書いた筆のタイトルの文字がかかっている、っていうハコを作っているだけで、どんな人が来てもその催しになっちゃうんです。パッケージになっているので、実はやりやすい。そういうのもすごく面白いなあって思いますね。


やっているうちに、だんだん一人歩きして

もともとはゆるく始まったのは間違いないんです。ところがやっているうちに、だんだん一人歩きして・・・地方に行ったときに、「西荻のなんとかっていうお店で、面白いことやってるそうですね、なかなか東京にも行けないんですけど、ああいうの、よかったらうちでもやってもらえませんか」ってオファーもちょろちょろと出るようになってきて・・・ますます身が引き締まる思いなんですけどね。

ホームページを見て、なんだか毎月やってて、ブッキングに四苦八苦している様子とかね(笑)、その呼んだゲストの人物を見て、面白いと思うんでしょうね。で、この前、名古屋で「ややっの夜 番外編 名古屋版」ということで一回やりましたけど、これからもしかしたら増えていくかもしれないですね。

別な見方でもう一つ言うと、ライブハウスというものがたくさんある中で、個人営業でやってらっしゃるようなところもいっぱいありますよね。ああいうところのマスターやママと話をしていると、やっぱり一生懸命、身を削ってやってらっしゃるので・・・その、そこの場所でしかやってないこと、というのがすごく大事だな、と。ライブハウスに対する、お礼の気持ち、共に頑張っていきましょうという気持ち、リスペクトもあるんですよね。ぼくらはそういう場所があることがありがたいことで、場所がなければ表現するところがなくなってしまうわけで・・・。

「やや」に限って言うと、店の方と毎回、反省会みたいなことをやっているんです。お客さんが帰った後に、よく激論を闘わせているんですよ。「今日のはどうだった」とか。まあそんなにキツイこと言うばっかりじゃなくて、前向きな話でね。そういうのが積み重なることが、すごく自分にとって、意味が大きくなってきていますね。なかなかアルバムとかを作らない人間なんで(笑)、「やや」とかソロみたいなことをやっていることによって、自分にとっても対外的にも、太田惠資のアイデンティティといったことを担っている。看板みたいになっていることは間違いないですね。(ややっの夜は)ゲストによって音楽性が全然違うので、自分の音楽性の柱というのとはまた違うんですけど、武者修行をしているという自信みたいなものが、自分の音楽活動の中にフィードバックしている、という感じのものですかね。だから「やっててよかったな」と思いますね。だから、めげずにやろうと思っているんですけどね。

(続く)


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